今回は宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』について、基本情報・登場人物や冒頭文紹介をした後、あらすじをご紹介します。
あらすじは「簡単なもの・長いもの」の2種になっています。どちらもネタバレ有になりますのでご注意ください。
逆に、「いろいろな事情があってあらすじをすぐ知りたい」という方のご参考になればと思っています!
もしあらすじを見た後に興味があったら、原文が無料で読めますので、ぜひご覧ください。(記事の最後にリンクを載せておきます)
また「なぜジョバンニが銀河鉄道に乗れたのか」について、個人的な考えを最後に少しお話しています。
23/07/12追記
『銀河鉄道の夜』を詳しく考察した記事を別に書きましたので、あらすじではなく考察メインで読みたい方・宮沢賢治が何を言いたかったのか考えたい人はこちらをご覧ください。
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基本情報
作者について
1896年8月27日 – 1933年9月21日(享年37歳) 岩手県花巻市出身
日本の詩人、童話作家。仏教(法華経)信仰と農民生活に根ざした創作を行った。彼の作品は生前ほとんど一般には知られず無名に近く、没後、草野心平らの尽力により作品群が広く知られ、世評が急速に高まり国民的作家となっていき、今でも日本には広く愛好者が存在する。
Wikipediaより抜粋
『銀河鉄道の夜』情報
執筆年 | 1924年~1931年頃 |
ページ数 | 74ページ (AmazonのKindle青空文庫版による) |
※この作品は作者によって何度も手を入れられています。ここでは最後の第四稿を元にしてのご紹介です
登場人物
- ジョバンニ…主人公
- カムパネルラ…主人公の友達
- 学校の友人(ザネリなど)
冒頭文
「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」
余談ですが、この冒頭文は現代の作家の三秋縋さんの『三日間の幸福』の第一章と似ている気がします。 三秋縋さんの宮沢賢治リスペクトかもしれません。
では皆さんは、そういうふうにかけがえのないものだといわれたり、何よりも価値のあるものだといわれたりしている『人間の命』は、実際の金額にすると、いくらくらいのものだと思っていますか?(『三日間の幸福』三秋 縋 第一章より抜粋)
銀河鉄道の夜は、現代でも影響が大きい作品です。
米津玄師さんの5thアルバム「STRAY SHEEP」に収録されている『カムパネルラ』は、『銀河鉄道の夜』をモチーフにした曲です。
生きていく者と消えてしまった者をテーマにしていますが、ジョバンニとカンパネルラというよりは、ザネリとカンパネルラをイメージしているそうです。
はい。カムパネルラに対して歌っている曲ではあるんですけれど、歌っている人はジョバンニではなく、どちらかというとザネリというイメージです。ザネリはいじわるな子で、カムパネルラが死ぬ直接的な原因になってしまった人。自分はザネリにすごく感情移入する部分があるんです。人間は犯した過ちによって、直接的、間接的に限らず、誰かの死の原因になり得る。自分のいろんな選択が、誰かの死につながっていると思うんです。
音楽ナタリー「米津玄師『STRAY SHEEP』インタビュー」より引用
簡単なあらすじ
まずは簡単なあらすじです。
今日は村の銀河のお祭りの日です。夕方ジョバンニが村の丘でさびしい気持ちで横になっていると、いつの間にか銀河を走る列車の中にいました。そこには友人のカムパネルラがいました。
ジョバンニとカムパネルラは美しい銀河を旅します。
旅の最後でカムパネルラは消え、気が付くとジョバンニは元の村の丘にいました。
丘を降りると橋の所に人だかりがあります。そこでジョバンニは、カムパネルラが友人を助けようとして川に入り、溺れて死んだということを告げられました。
詳しいあらすじ
次に、イメージ画像を挟みながら、詳しいあらすじをご紹介します。
ジョバンニの家は父・母・姉・自分の4人家族です。
父は漁師ですが連絡がないまましばらく帰っていません。母は体調が悪く、姉と自分で家族を助けています。
今日は学校で銀河についての授業を受けました。けれどもジョバンニはこの頃学校の後に働いているので、授業中はいつも疲れて眠い状態です。
今日も学校の後に働きに出ました。家に帰ってみると届いているはずの牛乳が届いていなかったので、それを受け取るために出かけました。
今日は村の銀河のお祭りです。
途中で学校の友達に会いましたが、友達はこの頃ジョバンニの父をネタにしてジョバンニをからかいます。特にザネリはひどいです。
銀河のお祭りで、街はきれいに飾られています。明るいネオンが星や宝石のようです。けれどジョバンニの心はその明るさとはうらはらでした。
牛乳屋の帰りにザネリにまたからかわれました。
その中にカムパネルラがいることに気が付きました。カムパネルラはジョバンニの小さい時からの友達です。カムパネルラの父親とジョバンニの父親も同じように幼馴染同士なのです。
カムパネルラはからかいはしないけれど、気の毒そうな顔をしつつ、けれど黙ってザネリたちと一緒に去っていきました。
ジョバンニは急にさびしくなってその場を逃げるように走り出しました。
そのまま丘まで行きました。頂きに「天気輪の柱」と言われるものがあります。そこの草の上で寝転んでぼんやりとしていると、天気輪の柱が光り出し、「銀河ステーション、銀河ステーション」という声が聞こえ…
気が付くとジョバンニは列車に乗っていました。目の前の席にはカンパネルラがいました。カンパネルラは濡れたように真っ黒な上着を着ています。そして、「もうすぐ白鳥の停車場だよ」と言いました。
そう、列車は銀河の中を走っているのでした。
列車は天の川の水や、青白く光る三角点の中を走っているのでした。
カムパネルラが「お母さんは僕をゆるしてくれるかな」と言いました。
けれどもその話は、列車内が急に明るくなったことで途切れました。
列車は進み、白い水晶の砂が光る白鳥座の海岸などを通ります。途中、鳥を捕る人(もらって食べてみると雁はチョコレートより美味しいお菓子でした)に出会い、サファイヤとトパーズがくるくるとまわるアルビレオの観測所などを通り過ぎたりしました。
そこで車掌に切符を求められて、切符を持っていないジョバンニはどうしようかとどぎまぎします。
とりあえずポケットを探ると何か紙がでてきたので渡すと、先ほどの鳥捕りが横から覗き、「これはどこでもいける切符だ」と言いました。
ジョバンニはふいに、鳥捕りのために何かがしたい気持ちになりました。
けれどそれはあまりにも急におとずれた考えだったので、どうしようかと鳥捕りをみたら、彼はいなくなっていました。
ジョバンニはなにかへんてこな気持ちがしました。
そうしたら今度は、濡れた髪をした男の子・青年・女の子の3人が現れました。彼らは船に乗っていたけれど、その船が氷山にぶつかって、救命ボートを人に譲り、気が付くとここにいたとのことでした。
ジョバンニは今度は船に乗っていた人のために何かがしたい、と思いました。けれどどうしていいかわかりません。
ジョバンニ・カムパネルラ・男の子・青年・女の子で話をします。ジョバンニはなんだかカムパネルラと女の子が仲良く話しているのをみて、少し面白くない気分になるのでした。
汽車はさそり座のアンタレスを過ぎ、サウザンクロス(南十字星)に到着します。途中乗車の3人はここで降りなければいけないようです。
サウザンクロスは天上への道が続くところ。ジョバンニはここで3人と別れるのがさびしくなって、
「天上にいかなくてもいい。地上に天上よりもいいところを作ればいい」
というのですが、青年たちは行きます。
汽車の中で乗客たちの「ハレルヤハレルヤ」という合唱が起こりました。そして彼らは他の乗客と一緒に出て行ってしまいました。
またカムパネルラと二人きりになってしまいました。
ジョバンニは「ほんとうのさいわい」とは何だろう、と考えカムパネルラに伝えるのですが、カムパネルラは「わからない」と答えるのでした。ジョバンニは「僕はみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く」と言いました。
汽車は「石炭袋」と言われる場所に近づきました。遠くにきれいな野原が見えます。
それを見たカンパネルラが「お母さんがいる」と言いました。
ジョバンニには見えませんでした。
「カンパネルラ、僕たち一緒に行こうね」と言い、振り返ると、カムパネルラがいなくなっていました。
ジョバンニは泣きました。
そして…
気が付くともとの丘の草の中で横になって寝ていたのでした。
あわてて飛び起きました。丘を走り降りました。川の橋の所で人だかりが出来ています。聞いてみると、カムパネルラが水へ落ちたザネリを助けようとして川に飛び込み、ザネリは助かったけれど、カムパネルラが見つからないとのこと。
そこにいたカムパネルラの父親が
「もう駄目です。落ちてから45分経ちましたから」と言います。
思わず近づいたけれど何も言えなくなっているジョバンニに対して、カムパネルラのお父さんは「あなたのお父さんから私に便りがありました。今日あたり帰ってくるはずですよ」と告げました。
早くお母さんに伝えなければ、とジョバンニは走り出しました。
- 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』 完 -
『銀河鉄道の夜』で検索すると出て来る、赤と青の猫の画像が気になっている人も多いんじゃないでしょうか。
実はこれは、1985年7月に公開された映画『銀河鉄道の夜』のキャラクターです
古い作品ですが、今でもファンが多い、独特の雰囲気がある映画です。
こちらの記事では、アニメ『銀河鉄道の夜』をフルで観る方法について紹介しています。
感想 ジョバンニはなぜ銀河鉄道に乗れたのか
ここまであらすじを読んでいただきありがとうございます
ここで少し、「なぜジョバンニが銀河鉄道に乗れたのか」という疑問について、個人的な考えをお話してみようと思います。
銀河鉄道は死者を送るための列車です。
それではなぜ生きているジョバンニが、銀河鉄道に乗れたのでしょうか。
カムパネルラは、わけもないという風で、小さな鼠いろの切符を出しました。ジョバンニは、すっかりあわててしまって、もしか上着のポケットにでも、入っていたかとおもいながら、手を入れて見ましたら、何か大きな畳んだ紙きれにあたりました。こんなもの入っていたろうかと思って、急いで出してみましたら、それは四つに折ったはがきぐらいの大きさの緑いろの紙でした。
おや、こいつは大したもんですぜ。こいつはもう、ほんとうの天上へさえ行ける切符だ。天上どこじゃない、どこでも勝手にあるける通行券です。
推測ですが、ジョバンニが他の人とは別の「どこにでも行ける大きな切符」を持っていたことが鍵だと私は思っています。
死者は一方通行で死者の国に行く小さな切符しか持っていません。
でもジョバンニは生きているので「どこにでも行ける」大きな切符を持っているのです。
死者を送る列車ですら、心を広げれば羽ばたくことができます。
ジョバンニが特別な人だったわけではなく、生きている人はみんなこの「どこにでも行ける」切符を持っているのだと私は思っています。
死んでしまった人は決まった場所に行くことしかできませんが、生きている人はどこにでも行き、新しいなにかを作り上げることができます。
それはジョバンニがこの銀河鉄道でたどり着いた
- ここを天上よりももっといいところにする
- みんなの「ほんとうのさいわい」を作るためにしっかりやろうと思う
という決意や、それを胸いっぱいに湧きたたせる
「新しい力」
と繋がっていると思います。
自分たちに与えられた切符を大切にしたいですね
まとめ
『銀河鉄道の夜』は「ほんとうのさいわい」と「自己犠牲」との関連などがテーマとして考えられる作品ですが、それとは別にこの作品を宮沢賢治の「科学者としての立場」から読んでも面白いです。
宮沢賢治は現代では作家として知られていますが、農学校の教師で農業指導者です。教諭時代に教えていたのは英語、代数、肥料、土壌などで、作品の美しい描写はその科学知識を生かしたものです。
そのような科学知識を調べながら、この作品を読むこともできます。
物語の白鳥座の海岸の砂は水晶で出来ていて、こすりあわせると光ります。
これは実際の水晶や石英で起こる反応で「摩擦ルミネセンス」と言われています。
宮沢賢治の作品では、鉱物を使った表現も出てきます。
「宮沢賢治の元素図鑑ー作品を彩る元素と鉱物」は宮沢賢治作品に出てくる鉱物を、宮沢賢治の文と一緒に紹介した本です。
たぶん色とりどりなんだろうな、ぐらいに思っていた表現が、ますます色鮮やかに見えてくる本です。オススメです。
今回省略してしまった部分もあるので、興味を持った方は原文をお読みください。
Amazonや青空文庫で無料で読むことができます。
無料で読めます。Amazon Kindle 『銀河鉄道の夜』
無料で読めます。青空文庫『銀河鉄道の夜』
また、ますむら・ひろしさんが賢治シリーズの一冊として、マンガで『銀河鉄道の夜』を描いています。
かなり原作に忠実で、しかも、初期稿の「ブルカニロ博士篇」もマンガにしているので、とてもわかりやすくなっています。
原作を忠実に再現しています
「簡単なあらすじ」の最初に挙げた画像は、カミオジャパン様の「てのひら図書館シール 【銀河鉄道の夜】」。
シートに名作がまとめられて金色の反射が美しい、それ自体が挿絵付の絵本みたいなシールです。
台紙から外すのがもったいない!というかたには、枚数の入ったこちらの「てのひら図書館 シールフレーク 【銀河鉄道の夜】」もあります。両方持ってます。こっちでしおりを作ろうかな…。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
こちらでは同じ宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』『どんぐりと山猫』についてあらすじを紹介しています。
あわせてご覧ください。
宮沢賢治の記事まとめはこちら!