文豪の文豪に対する熱い想いを紹介している本です
今回ご紹介したいのは、彩図社から2022年12月に出版された、『文豪が愛した文豪』です。
ジャンルとしては、「文豪知識を深める本」になると思います。
著者の真山知幸さんは偉人研究家。偉人や名言の研究を行い、著作は50冊以上あります。
大学公開講座などでの講師活動も行っているそうです。
文豪や知人の回想、手紙や日記などを元に、文豪の文豪に対する想いを読みやすい文章で紹介しています。
「文豪」という言葉からは、「意識高くて自分と違う」とちょっと思ってしまいませんか?
もちろん個性が強い人達なので反応は強いですが、「好き・嫌い」「甘え」「憧れ」などの人間関係の基本部分は私たちと同じです。(けどちょっと強いけど)
人間関係を見ることで、文豪を身近に感じることができます。
ちなみに私のブログも、個人エピよりも、文豪の人間関係エピの方が人気あったりします
この本は「文豪同士の人間関係」の中でも、特に「文豪同士の愛」にフォーカスした本です。オススメします。
『文豪が愛した文豪』書籍情報
内容紹介
「新聞は〝崇拝〟と表現 芥川龍之介に対する太宰治の強烈な愛」
版元ドットコム 『文豪が愛した文豪』 紹介 より引用
「夏目漱石を絶対視 だけど旅先に押しかけ借金を頼む内田百閒」
「恋も文学も我が道を行く 森鷗外と永井荷風の交流と意外な共通点」
「酒・喧嘩・宮沢賢治を好きすぎて意気投合 中原中也と草野心平」
本書はこうした、文豪同士の「愛」にフォーカスした書籍です。
「あこがれ」「友情」「愛憎」という三つの切り口に基づいて、「文豪による文豪への愛」を紹介します。題材にするのは、文豪や知人の回想、手紙や日記など。文豪たちの知られざる、人間味あふれる素顔に迫っていきます。
『文豪が愛した文豪』目次
クリックするとその章の登場文豪の名前がわかります!
一、あこがれの章
太宰治→芥川龍之介
堀辰雄→芥川龍之介
芥川龍之介→夏目漱石
内田百閒→夏目漱石
泉鏡花→尾崎紅葉
幸田露伴→坪内逍遥
永井荷風→森鴎外
谷崎潤一郎→永井荷風
小林多喜二→志賀直哉
川端康成→菊池寛
夢野久作→江戸川乱歩
中原中也→宮沢賢治
三好達治→萩原朔太郎
石川啄木→与謝野晶子
寺山修司→石川啄木
二、友情の章
夏目漱石⇔正岡子規
芥川龍之介⇔佐藤春夫
芥川龍之介⇔菊池寛
萩原朔太郎⇔室生犀星
萩原朔太郎&室生犀星⇔北原白秋
川端康成⇔横光利一
梶井基次郎⇔三好達治
太宰治⇔坂口安吾
太宰治⇔林芙美子
中原中也⇔草野心平
安岡正太郎⇔遠藤周作
三、愛憎の章
檀一雄→太宰治
太宰治⇔中原中也
大岡昇平⇔中原中也
室生犀星→高村光太郎
田山花袋⇔柳田國男
三島由紀夫→太宰治
太宰治→井伏鱒二
ここがいい! 『文豪が愛した文豪』おすすめポイント
『文豪が愛した文豪』のおすすめポイントを3つご紹介します。
おすすめポイント1 33組の登場文豪
こちらの書影、載っている文豪の名前が書かれている下に、芥川龍之介の写真と、その芥川龍之介の真似をしている太宰治の写真が並んでいます。
そちらが眼をひきますが…
実はこの部分は帯だったりします。
帯の裏には、さらにたくさんの登場文豪の名前が…。
幅広い文豪エピソードを扱っているのがこの本の魅力です。
総勢33組にものぼっています。
その分、1つの関係については5~10ページとそこまで長くはありませんが、有名な逸話を知ることができます。
ちなみに、帯下の裏表紙にも詩人・萩原朔太郎の素敵ワードがいました。
憎い奴は殺さなければ気がすまない、
好きな人は抱きつかなければ気がすまない、
僕はここに居ます
これをお手紙に書くんか…。
。
おすすめポイント2 読みやすく元気が出る文章
文豪の逸話は引用があまり多くなると、過去の文章だけにどうしても読みにくくなってしまいます。
けれどこの本では、引用は基本的にはあまり長い文章にせず、噛み砕いてあるので読みやすいです。
筆者の真山知幸さんも、もちろんこの本を読んで頭をかかえてほしいと思っているわけではなく、「はじめに」によると、
彼ら彼女らの「大切な人への熱すぎる思い」は、読んでいるだけで感情が揺さぶられて、なんだか元気が出てくるものだ。筆者もこの本を書きながら、文豪たちをよりいっそう好きになっていった。読者の皆さんにも楽しんでもらえるとうれしい。
と、「楽しむことで元気をもらってほしい」と書いています。
おすすめポイント3 いろいろな文献をあたっている
本文を読んでいておもしろいなと思ったのが、文豪の引用をしながらも「これは事実ではない」と言っている部分がいくつかあることです。
文豪も人の子、そして小説家であるからしてエンターテイナー。
どうしても読む人に喜んで貰うために話を盛ってしまうところや、あと大好きな人にまつわる気に入らない人を、悪く書いてしまうこともあるんですね…。
そういう部分から逆に文豪の人間味が感じ取れます。さらに「きちんと調べてある」ということも感じました。
参考文献は、巻末に本文よりも小さい文字でかかれた8ページ。
でもここは「《出典・主要参考文献》」となっているように、著者様はもっとたくさんの本を参考にしていると思います。
それが一冊で読めるようになってる!
おすすめしたい人・合わないかもしれない人
この本を特におすすめしたいのは、「文豪の人間関係を広く知りたいかた」です。
文豪本をそこまで読んだことがなく、興味はあるんだけど…と思っている人にオススメします。
逆に、誰に特化したというわけではないので、「特にこの文豪とこの文豪の関係について詳しく知りたい!」というかたにはちょっと物足りないかもしれません。
まとめ
2022年12月に発売された真山知幸さんの「文豪が愛した文豪」は、文豪本としては最新の部類に入ると思います。
文豪同士の熱い人間関係に触れてみたいかた、いかがでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございました
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