【レビュー】BUNGO 文豪短篇傑作選(角川文庫)|文豪作品を初めて読む方におすすめ

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アニメや漫画から興味をもって、実際の文豪の作品を読んでみたいんですが、何から読めばいいのかわかりません(20代・Aさん)

難しそうで気後れしてしまうんです。
個人的な好みですが、アニメとコラボしていないデザインのほうがいいです。

そんな人にはこの作品集をおすすめします

今回ご紹介するのは、KADOKAWAから2012年8月に出版された、『BUNGO 文豪短篇傑作選』。
芥川龍之介、太宰治、宮沢賢治、谷崎潤一郎など有名な作家たちの短編12編が収められた作品集です。

文壇を代表する11人の作家による珠玉の短編12編をまとめた贅沢な1冊。


芥川、太宰、安吾、荷風……誰もがその名を知る11人の文豪たちの手による珠玉の12編をまとめたアンソロジー。文学の達人たちが紡ぎ上げた極上の短編をご堪能あれ。

KADOKAWAオフィシャルサイト 『BUNGO 文豪短篇傑作選』 より引用
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『BUNGO 文豪短篇傑作選』をおすすめする理由

『BUNGO 文豪短篇傑作選』を文豪作品初心者におすすめするポイントを3つご紹介します。

おすすめポイント1 「有名作家」の「わかりやすい短篇」に触れられる

こちらが、この本に載っている12篇の作品名・収録作家・発表年・作品のあらすじです。

川

高瀬舟 森鷗外 1916(大正5)年1月
罪人を遠島に送るために高瀬川を下る舟に、弟を殺した喜助という男が乗せられた。舟の護送役の羽田庄兵衛は、喜助が楽しげで晴れやかな顔をしていることを不思議に思い、理由を尋ねる。

富美子の足 谷崎潤一郎 1919(大正8)年6-7月
塚越は40歳以上も年の離れた若い芸者・富美子を妾にし、鎌倉で隠居していた。美術学校の学生で、塚越の遠い親類にあたる宇之吉は、塚越に「富美子をモデルに絵を描いてくれ」と依頼される。

タロットカード

魔術 芥川龍之介 1919(大正8)年11月
ある時雨の降る晩、私はハッサン・カンという婆羅門の秘宝を学んだマテイラム・ミスラ君のもとを訪ねた。彼は魔術の大家で、その日、彼は私に魔術を見せてくれた。「自分にも魔術を教えて欲しい」と頼む私に対して、彼は、まず欲を捨てることが必要だと言う。

注文の多い料理店 宮沢賢治 1921(大正10)年11月
2人の若い紳士が、銃を持ち山奥に狩りにやってきました。けれど獲物は見当たらず、つれてきた犬は死に、お腹はペコペコ。散々な状態です。そんな彼らの前に「西洋料理店 山猫軒」と書かれた立派な家が現れました。

檸檬 梶井基次郎 1925(大正14)年1月
肺を病んだ私は、不吉な魂に取り憑かれていた。それまで私を喜ばせていた美しい詩や音楽に興味を失い、街をさまよい歩いていた。そんな時、私は果物屋の店頭にあった檸檬に目を止める。

鮨

鮨 岡本かの子 1939(昭和14)年1月
「福ずし」の看板娘ともよは、店の常連客で中年紳士の湊に好感ともいえる興味を持っていた。ある日、ともよは街中で湊にばったり遭遇する。

黄金風景 太宰治 1939(昭和14)年3月
子供のときに、お慶という女中をいびっていた「私」。そんな私は郷里を離れ、小説家として病と闘いながら暗鬱な気持ちで暮らしていた。そんなある日、お慶の夫と偶然出会う。

幸福の彼方 林芙美子 1940(昭和15)年
戦後の日本。信一と見合い結婚をし、穏やかで思いやりに満ちた生活をしていた絹子。しかしある日、信一に子供がいると聞かされる。

グッド・バイ 太宰治 1948(昭和23)年6月
表向きは雑誌編集長だが、裏の闇商売で儲けてきた田島には、愛人を10人ちかく養っているという噂まである。そんな生活に嫌気がさした田島は、愛人たちと別れようと初老の不良文士に相談し、「秘訣」を授けられる。(未完)

古民家の階段と二階

人妻 永井荷風 1949(昭和24)年10月
青年・桑田は現在借りている二階から引っ越したいと思いながらも決心がつかずにいた。
桑田の住んでいる家の一階には家主夫婦が住んでいる。その妻で若く色気のある年子が気になって仕方ないのだ。ある日、帰宅した桑田は縄で縛られた年子の姿を見つける。

握った手 坂口安吾 1954(昭和29)年4月
内気な大学生の松夫が綾子と初めて出会ったのは、映画館だった。映画のラブシーンに気持ちが高揚した松夫は、つい隣の席にいた綾子の手を握ってしまったのだ。松夫と綾子は恋人同士になった。しかし、松夫は「女性というものは手を握ったら誰にでも握り返すのでは」と思い、変わった行動に出る。

乳房 三浦哲郎 1966(昭和41)年5月
戦時中。15歳の少年である主人公は自分の胸が女性のように膨らんできていると感じ、困惑する。町の理髪店には夫が出征し店を任されている、かな江がいた。

気になるあらすじはありましたか?

この文庫については「恋愛・食べ物などわかりやすい作品を集めていてポリシーが無い」というレビューも見かけましたが、そこは、いい点でもあります。

恋愛・食べ物ってみんなが興味を持つことですよね

思い悩む男女

例えば坂口安吾の『握った手』
これは若い男性のめんどくさい恋愛を描いています。

強い恋愛衝動がありながら、変に潔癖でそこに理屈を求め、その衝動と理屈に挟まれて大胆になったり不安に陥ったり行ったり来たり…。
果ては確認のために、妙な行動を起こして自滅する…。

最近流行った「蛙化現象」(片想いしていた相手が自分のことを好き=両想いだと知った途端に相手への気持ちが覚めてしまう現象)という言葉は若い女性に起こりがちなめんどくさい恋愛の形だと思いますが、坂口安吾の『握った手』は、負けず劣らずめんどくさい若い男性の恋愛観を描いています。

こういう若い男性のめんどくささにも、何か用語を付けて欲しい…。

文豪の作品はわかりにくい!、と思われがちな理由は

  • ストーリーがはっきりしない。
  • ドラマ性が薄い。

からだと思いますが、この文庫には、ドラマ性が強くすぐ読み終わる短篇が集められているので、きっと読みやすいはずです。

ちなみにこのブログでは、「BUNGO」に収められている太宰治の『黄金風景』について考察をしています。
読んでモヤモヤが残ってしまったらこちらもどうぞ。

おすすめポイント2 あの頃を思い出す作品も押さえている

青空

どこかで聞いた作品も混ざっています

『高瀬舟』『注文の多い料理店』『檸檬』は聞いたことがありませんか?
これらは、小中学校・高校の国語教科書にも採用されている作品です。
学生の時に習った人も多いと思います。

一度読んだことのある作品なら、最後まで読めるはずです。
その時々の状態で、違った感想を持てるのが文学のいいところ。
学生時代を思い出すきっかけにもなります。

教科書作品は急に話に出てきて話題についていけず焦ることがあるので、復習しておくと安心

もちろん旧字旧かなは新字新かなに直し済み。
数は25個とそこまで多くはないですが、わかりにくい言葉には最後に註釈が付いています。
読みやすさを考えた作品集です。

おすすめポイント3 映像化されていてDVDがある

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